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東京高等裁判所 昭和40年(ラ)522号 決定 1966年2月01日

抗告人

日東容器株式会社

代理人

松尾翼

古谷明一

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣旨および理由は別紙記載のとおりである。

まず本件抗告が適法であるかどうかについて判断する。

当事者の管轄違を理由とする移送の申立を却下した決定が、民事訴訟法第三三条の「移送ノ申立ヲ却下シタル裁判」に該当するか否かについては争いがあるが、これを否定すべき明文上の根拠がないばかりでなく、実質的にこれをみると、成程同法第三一条および第三一条ノ二が当事者に移送の申立権を認めているのに反し、同法第三〇条の管轄の場合にあつてはかような申立権を認めていないけれども、裁判所が当事者の管轄違を理由とする移送の申立に対して何等かの判断を示した場合には、その判断に誤りがないという保障はないのであつて、誤つた判断に対しては当事者に不服を申立てさせてこれを是正すべきことを否定すべき合理的根拠はない。従つて当裁判所は、右申立を却下した決定は、同法第三三条の「移送ノ申立ヲ却下シタル裁判」に該当し、当事者はこれに対し即時抗告をすることができると解することを妨げないと思料するものであつて、本件抗告は適法というべきである。

次に本件抗告の当否を検討する。

民事訴訟法第二一条は、訴の客観的併合の場合のみならず、訴の主観的併合にあつても同法第五九条前段の要件を充たす場合にはその適用があるものと解すべきところ、本件記録によると原告の本訴請求は、被告たる抗告人が相被告たる福泉醸造工業株式会社に宛て振出した約束手形二通を、原告が右会社から裏書譲渡をうけてその所持人となつたことを前提とし、右各手形の振出人たる抗告人および裏書人たる右会社を共同被告として右各手形金の支払を求めるものであることがうかがわれ、手形の振出人と裏書人との関係は、形式的には同法第五九条前段の「訴訟ノ目的タル権利又ハ義務カ数人ニ付共通ナルトキ又ハ同一ノ事実上及法律上ノ原因ニ基クトキ」には該当しないにしても、両者は所持人に対し合同して責任を負い実質上連帯債務者の関係にある場合が多く、かつ同一裁判所において審理すべき訴訟経済上の実益も極めて大というべきであるから、本件については同法第五九条前段の共同訴訟の場合に準じ、同法第二一条の適用があるものと解するのが相当である。これに反する抗告人の見解は採用できない。従つて、共同被告たる前記会社につき管轄権を有する原審裁判所は、抗告人についても管轄権を有するものというべく、抗告人の移送の申立を却下した原決定は相当であつて、結局本件抗告は理由がない。

よつて主文のとおり決定する。(岸上康夫 室伏壮一郎 斎藤次郎)

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